2025/01/15
過去のブログ紹介 扁額(へんがく)の修復 4
過去のブログ紹介、前回に続き扁額(へんがく)の修復4についてです。
前回は、具体的な処置について紹介いたしました。
今回は、最後の仕上げについてです。
さて、本紙が綺麗になったところで、最後の仕上げです。
今回は額を新調しますので、骨から作りました。
意外と地道な作業の連続です。
7.額装の仕立て
骨を新調しました。
パネルの下張り加工をします。
新調した縁裂(へりきれ)と小筋裂(こすじきれ)を調整します。
まず、新調した裂に肌裏打ちを行いました。
・肌裏打ち紙;薄美濃紙(長谷川聡製作 手漉き楮紙)
・接着剤;生麩糊(小麦澱粉糊)
本紙の裏面にから小筋の裂を付けます。
縁裂を付けた本紙を下張りパネルに張り込みます。
・接着剤;生麩糊(小麦澱粉糊)
裏面に裏貼り紙を貼りこみましだ。
・裏貼り紙;藍紙(藍染め楮紙)
・接着剤;生麩糊(小麦澱粉糊)
8.額の仕上げ
新調した吊り金具を装着しました。
縁木に新調した紫外線カットアクリル板を入れ、パネルを装着して仕上げました。
9.修復後の写真撮影、報告書の作成
修復後の写真を撮影し、報告書を作成します。
10.収納
・中性紙布貼りケースを新調して、収納しました。
○ 修復前
種 類:扁額装/絹本著色
寸 法:(修復前) 額寸法 縦:460㎜×横:1263㎜
画面寸法 縦:355㎜×横:985㎜
装 丁:扁額装
パネル:骨組子に下張り加工
縁木(ふち): 黒色塗装
パネルと縁木は釘による装着
グレージング:なし
縁(へり) :砂子蒔き紙
覆輪(ふくりん):紫地紙(本紙周辺を縁取りしている紙)
裏貼り(裏面) :灰茶地紙
○ 修復後
種 類:扁額装/絹本著色
寸 法:(修復後) 額寸法 縦:508㎜×横:1330㎜
本紙寸法 縦:355㎜×横:988㎜
装 丁:扁額装
パネル:杉材骨組子 留め具サルコ付き 下張り加工(8層)(新調)
縁木(ふち) : 艶消し黒本漆塗り (新調)
パネルと縁木は留め具のサルコによる装着
グレージング : 3㎜UVカットアクリル板
縁裂(へりきれ): 浅葱地斜子無地(新調)
小筋裂(こすじきれ): 白茶地龍紋本金襴(新調)
裏貼り(裏面) : 藍紙(藍染め楮紙)
下張り層(骨組子に下張り8層の工程を行った)
骨縛り、胴貼り、蓑掛け(3層)、蓑縛り、袋貼り(下袋、上袋)2層
骨縛り、蓑掛け、蓑縛り、袋貼り;八女楮紙(溝田義秋製作 手漉き楮紙)
胴貼り;泥(タルク)入り楮紙(大勝敬文製作 手漉き楮紙)
写真と合わせた詳細はブログをご覧ください。
伝世舎blog日日是好日
前回は、具体的な処置について紹介いたしました。
今回は、最後の仕上げについてです。
さて、本紙が綺麗になったところで、最後の仕上げです。
今回は額を新調しますので、骨から作りました。
意外と地道な作業の連続です。
7.額装の仕立て
骨を新調しました。
パネルの下張り加工をします。
新調した縁裂(へりきれ)と小筋裂(こすじきれ)を調整します。
まず、新調した裂に肌裏打ちを行いました。
・肌裏打ち紙;薄美濃紙(長谷川聡製作 手漉き楮紙)
・接着剤;生麩糊(小麦澱粉糊)
本紙の裏面にから小筋の裂を付けます。
縁裂を付けた本紙を下張りパネルに張り込みます。
・接着剤;生麩糊(小麦澱粉糊)
裏面に裏貼り紙を貼りこみましだ。
・裏貼り紙;藍紙(藍染め楮紙)
・接着剤;生麩糊(小麦澱粉糊)
8.額の仕上げ
新調した吊り金具を装着しました。
縁木に新調した紫外線カットアクリル板を入れ、パネルを装着して仕上げました。
9.修復後の写真撮影、報告書の作成
修復後の写真を撮影し、報告書を作成します。
10.収納
・中性紙布貼りケースを新調して、収納しました。
○ 修復前
種 類:扁額装/絹本著色
寸 法:(修復前) 額寸法 縦:460㎜×横:1263㎜
画面寸法 縦:355㎜×横:985㎜
装 丁:扁額装
パネル:骨組子に下張り加工
縁木(ふち): 黒色塗装
パネルと縁木は釘による装着
グレージング:なし
縁(へり) :砂子蒔き紙
覆輪(ふくりん):紫地紙(本紙周辺を縁取りしている紙)
裏貼り(裏面) :灰茶地紙
○ 修復後
種 類:扁額装/絹本著色
寸 法:(修復後) 額寸法 縦:508㎜×横:1330㎜
本紙寸法 縦:355㎜×横:988㎜
装 丁:扁額装
パネル:杉材骨組子 留め具サルコ付き 下張り加工(8層)(新調)
縁木(ふち) : 艶消し黒本漆塗り (新調)
パネルと縁木は留め具のサルコによる装着
グレージング : 3㎜UVカットアクリル板
縁裂(へりきれ): 浅葱地斜子無地(新調)
小筋裂(こすじきれ): 白茶地龍紋本金襴(新調)
裏貼り(裏面) : 藍紙(藍染め楮紙)
下張り層(骨組子に下張り8層の工程を行った)
骨縛り、胴貼り、蓑掛け(3層)、蓑縛り、袋貼り(下袋、上袋)2層
骨縛り、蓑掛け、蓑縛り、袋貼り;八女楮紙(溝田義秋製作 手漉き楮紙)
胴貼り;泥(タルク)入り楮紙(大勝敬文製作 手漉き楮紙)
写真と合わせた詳細はブログをご覧ください。
伝世舎blog日日是好日
2024/12/10
過去のブログ紹介 扁額(へんがく)の修復 3
過去のブログ紹介、前回に続き扁額(へんがく)の修復3についてです。
前回は、額について紹介いたしました。
今回は、具体的な処置についてです。
1. 修復前の写真撮影、および状態調査
ここでしっかり調査をしないと、ちゃんとした修復方針が
立てられません。
2. 額装からの本紙の分離
作品を額装から外します。
本紙を傷つけないように丁寧に作業します。
3.本紙表面の処置
画面にドライクリーニングを行い、表面の汚れを除去しました。
その後、虫糞などの付着物を除去しました。
そして墨字部分と朱印に剥落止めとして、約2%膠水溶液(膠:板膠)
を塗布しました。
4.クリーニング
本紙全体にウェットクリーニングを行いました。
本紙を精製水で湿らせた吸い取り紙で挟み、クリーニングを行いました。
吸い取り紙に汚れを吸着させて、全体の水染みなどの汚れや斑点を軽減します。
吸い取り紙を取り替えて、同様に数回にわたりクリーニングを行いました。
5.旧裏打ち紙の除去
旧裏打ち紙を剥がします。
6.本紙の裏打ち
本紙に肌裏打ち(画像)と増裏打ち(画像)を行いました。
・肌裏打ち紙;矢車染め薄美濃紙(長谷川聡製作 手漉き楮紙)
・増裏打ち;八女楮紙(溝田義秋製作 手漉き楮紙)
・接着剤;生麩糊(小麦澱粉糊)
写真と合わせた詳細はブログをご覧ください。
伝世舎blog日日是好日
前回は、額について紹介いたしました。
今回は、具体的な処置についてです。
1. 修復前の写真撮影、および状態調査
ここでしっかり調査をしないと、ちゃんとした修復方針が
立てられません。
2. 額装からの本紙の分離
作品を額装から外します。
本紙を傷つけないように丁寧に作業します。
3.本紙表面の処置
画面にドライクリーニングを行い、表面の汚れを除去しました。
その後、虫糞などの付着物を除去しました。
そして墨字部分と朱印に剥落止めとして、約2%膠水溶液(膠:板膠)
を塗布しました。
4.クリーニング
本紙全体にウェットクリーニングを行いました。
本紙を精製水で湿らせた吸い取り紙で挟み、クリーニングを行いました。
吸い取り紙に汚れを吸着させて、全体の水染みなどの汚れや斑点を軽減します。
吸い取り紙を取り替えて、同様に数回にわたりクリーニングを行いました。
5.旧裏打ち紙の除去
旧裏打ち紙を剥がします。
6.本紙の裏打ち
本紙に肌裏打ち(画像)と増裏打ち(画像)を行いました。
・肌裏打ち紙;矢車染め薄美濃紙(長谷川聡製作 手漉き楮紙)
・増裏打ち;八女楮紙(溝田義秋製作 手漉き楮紙)
・接着剤;生麩糊(小麦澱粉糊)
写真と合わせた詳細はブログをご覧ください。
伝世舎blog日日是好日
2024/11/12
過去のブログ紹介 扁額(へんがく)の修復 2
過去のブログ紹介、前回に続き扁額(へんがく)の修復2についてです。
前回は、修復作品について紹介いたしました。
今回は、額についてです。
具体的な処置に入る前に、まずは扁額についてお話ししましょう。
日本の額は、屋外の寺社、楼門、鳥居などに名称を木彫りした板額から
の始まりです。いわゆる表札のようなもので、時代の流れと共に、
庶民の間では看板の形や、または奉納額としての絵馬が広がっていきました。
もう一つの流れとして、屋外から寺院の屋内へ、書院や座敷の鴨居に
掛けられるようになり、構造が屏風や襖などと同様な骨(木の骨組)と
紙で構築する形態へと変化していきました。和額が発達したのは幕末頃
で、書や南画などの文人趣味の流行によります。特に書の額仕立てが
流行りました。そこから、横に長い扁額(へんがく)の様式が確立されました。
明治以降に洋風の額縁―「洋額」が輸入されてきたことで、
それとは区別するために「和額」と言うようになります。
和額の構造
和額の構造は、額縁とパネル装から構築されています。
◆ パネルの構造
骨(木の骨組)に何層もの和紙を工程ごとに違う方法で貼っていく。
これを「下張り」という。その表面に本紙を貼る。
◆ 下張りの役割
パネル自体に強度を持たせる。
骨を補強して歪みが出ないようにする。
骨と本紙の伸縮の差を吸収し、裂けの損傷をくい止めるなどの、
本紙の伸縮に対しての緩衝材としての役割をする。
骨から出る脂(やに)を吸収し、本紙に影響を与えないようにする。
○ 骨(骨下地)
○ 骨縛り(ほねしばり)
○ 同貼り(どうばり
○ 蓑掛け(みのがけ)
○ 蓑(みの)縛り(蓑押さえ)
○ 下袋(下浮け)
○ 上袋(上浮け)
○ 本紙、小筋、大縁
詳細はブログをご覧ください。
伝世舎blog日日是好日
前回は、修復作品について紹介いたしました。
今回は、額についてです。
具体的な処置に入る前に、まずは扁額についてお話ししましょう。
日本の額は、屋外の寺社、楼門、鳥居などに名称を木彫りした板額から
の始まりです。いわゆる表札のようなもので、時代の流れと共に、
庶民の間では看板の形や、または奉納額としての絵馬が広がっていきました。
もう一つの流れとして、屋外から寺院の屋内へ、書院や座敷の鴨居に
掛けられるようになり、構造が屏風や襖などと同様な骨(木の骨組)と
紙で構築する形態へと変化していきました。和額が発達したのは幕末頃
で、書や南画などの文人趣味の流行によります。特に書の額仕立てが
流行りました。そこから、横に長い扁額(へんがく)の様式が確立されました。
明治以降に洋風の額縁―「洋額」が輸入されてきたことで、
それとは区別するために「和額」と言うようになります。
和額の構造
和額の構造は、額縁とパネル装から構築されています。
◆ パネルの構造
骨(木の骨組)に何層もの和紙を工程ごとに違う方法で貼っていく。
これを「下張り」という。その表面に本紙を貼る。
◆ 下張りの役割
パネル自体に強度を持たせる。
骨を補強して歪みが出ないようにする。
骨と本紙の伸縮の差を吸収し、裂けの損傷をくい止めるなどの、
本紙の伸縮に対しての緩衝材としての役割をする。
骨から出る脂(やに)を吸収し、本紙に影響を与えないようにする。
○ 骨(骨下地)
○ 骨縛り(ほねしばり)
○ 同貼り(どうばり
○ 蓑掛け(みのがけ)
○ 蓑(みの)縛り(蓑押さえ)
○ 下袋(下浮け)
○ 上袋(上浮け)
○ 本紙、小筋、大縁
詳細はブログをご覧ください。
伝世舎blog日日是好日

