SDGs/エコへの取り組み
sdgs天然由来である和紙の原料と先人の知恵が持続可能な未来への道を開く
楮を原料とする手漉き和紙は、自然の循環を壊さずに持続可能なものづくりを実現してきました。
伝統的な製法に基づく和紙や天然由来の糊は、修復の場で再利用が可能で、美術品を長く守る力を備えています。
先人の知恵を生かした技術こそ、未来をつなぐ道標です。

先人の知恵が息づく、未来を守る和紙
伝世舎の日々の取り組み、東洋画や書、その表装の修復・保存の作業の中には、SDGs=持続可能な未来社会を実現させるためのヒントが散りばめられています。
東洋画や書、その表装作品は、顔料、墨、紙、絹、木、漆、金属などの素材から構築されています。先人たちが自然との共存の中で、創造し・護り・伝えてきました。
次世代に伝えるための修復には、先人たちが表装作品を制作するために培ってきた技術や材料は重要となります。
その多くは材料に関連したもので、ここでは和紙を中心とした例を紹介します。
昔から行われてきた紙漉きは、木の皮ときれいで豊富な水と寒冷な気候が大切です。自然との営みの中で和紙は作られてきました。
掛軸を作る際に使用される和紙には、薄美濃紙、美栖紙、宇陀紙という3種類の紙が使用されますが、これらは原料の100%がクワ科の植物である楮(こうぞ)で、手漉きによって生み出されます。
手漉きの作業では、繊維を取り出すため、アルカリ性の溶液で楮を煮るのですが、昔ながらの製法として木灰やソーダ灰を使用することで繊維をほぐすことができます。木灰は文字通り薪を焼いた際に生じる灰で、天然由来の原料になります。

自然に寄り添う伝統製法が、持続可能を支える
SDGsでは森林の保護もテーマの一つとされていますが、私たちが使用している楮は毎年手入れをして、枝を刈り取り、育てていく、それを和紙の原料とするため環境を破壊することはありません。
伝統的な製法で生まれた和紙がSDGsの概念に則ったものであることがお分かりおただけるかと思われます。
しかし、現在、広く流通している安価な和紙には材料に木材パルプが使用されて、工業製品化により修復においての長期の保存に適さないものがあります。木材パルプの使用は効率を重視する社会の中で盛んになったものですが、原料に木そのものを大量に使うことで森林の生態系に影響を及ぼす可能性があります。

千年先を見据えた、和紙と技の継承
天然由来の原料を使用した手漉きの和紙は、繊維の状態に戻しての再利用が可能です。
私たちが修復・保存に用いている東洋画や書、その表装作品の手法には1000年を超える歴史がありますが、決して伝統の保護だけを目的に受け継いでいるわけではありません。
美術品を100年、1000年先に残していくためには、長く受け継がれた技術こそが有効で、コスパ・タイパを優先するよりも先人たちが積み重ねた知恵を活用したほうが結果的に理想とする修復・保存の形につながります。
現在、楮の生産者の高齢化や減少が、和紙の生産量に影響を及ぼすことが懸念されています。海外産の楮が使用されるケースも増えていますが、品質を維持するためには国産の楮が必須とされるため、楮の生産者・紙漉きの技術者・私たちのようなエンドユーザーが、より強固に連携を取ることで和紙や伝統美術品の修復・保存の維持に努めたいと考えております。