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日本は四季に恵まれ、そこから多くの文化が育まれてきました。四季があるということは、「季節による温度や湿度の差が大きい」ということでもあります。先人たちは、様々な工夫をしながらその環境と上手に付き合ってきました。
たとえば、大事なもの・貴重なものは箱に入れられ、蔵に仕舞われ、大切に取り扱われていました。そして、年に一度か二度ほど、気候の安定した天気のよい日に「虫干し」を行うのです。これには、作品を鑑賞して楽しむのと同時に、風を通してあげること・変化がないかを確認すること、という意味もありました。長い年月を経て今なお現存する数々の作品は、代々こうして受け継がれてきたものなのです。
保存の基本は、作品を飾ったまま、または仕舞ったままにせずに、「保管環境を整えてあげること」です。劣化の要因となるものをできる限り取り除き、作品にやさしい保管環境をつくることが大切だといえます。
万物は時間と共に劣化していきます。自然に劣化してしまうのは仕方のないことですが、劣化の要因となる事象を知り、保管環境を整えることによって、劣化のスピードを抑えて長く保存することができます。
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温湿度 ・高温高湿または低温低湿な環境
・急激な温湿度の変化 -
光 ・紫外線
・赤外線 など -
空気汚染 ・大気汚染(排気ガス等)
・新築コンクリートの建物から発生するアンモニア
・シックハウスの原因となっているホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物
(建材・合板等)
・有機酸ガス(合板・塗料・接着剤等) など -
生物 ・カビ
・虫
・ネズミ など -
塵や埃 -
人災 ・不適切な取り扱い
・火災
・盗難 など -
天災 ・地震
・洪水 など
劣化の原因をできるだけ遠ざけることが作品にとって重要ですが、そのための方法も様々存在します。
掛軸等は軸棒に巻き付けて箱に入れて保存されますが、展開したり、巻き納めするときに生じる折れや歪みを少なくするためには、軸を太くすることが望まれます。そのため、本来の軸の上に太い巻軸を被せ、それに掛軸を巻き込むことで巻きを緩やかにします。これを「太巻芯」といい、巻くことで生じるリスクを軽減することができます。
太巻芯
軸棒に取り付ける太巻芯。巻く直径を大きくすることで、折れができにくくなります。
この方法ですと元々あった箱に戻すことができなくなりますが、写真の保存箱は新たな保存箱と本の箱を一緒に収納できるようにしてあります。
元箱(もとばこ)の保存の事例
掛軸を収納していた箱の表と裏、底板の裏に箱書きがりました。掛軸は全体の修復を行ったことで、寸法が変わり元箱に入らなくなったので、新調の箱に箱書きの蓋板を嵌め込んで保管することにしました。
長期にわたって保管・保存する際は、保存箱や包み紙などといった材料の素材についても、しっかり考慮することが大切です。不適切なものを選んでしまうと、作品に思わぬダメージを与えてしまう場合があるからです。美術館や博物館で使用されているもので、メーカーや研究機関が文化財の保存に適していると判断した素材を使うことをお勧めいたします。
(額の裏面)
酸性紙マットにセロハンテープで貼りつけられ、その上から直接作品に密着する形でベニヤ板が充てがわれていた。
マットは変色し、セロハンテープの接着剤が作品に着き、劣化して茶色に変色していた。
(画面側)
窓マットの表にまでシミが出ており、カットした窓の縁も変色している。
(額装改善後)
中性紙マットに窓空け。本紙は中性紙ボードに楮紙と生麩糊でヒンジ留めをし、蓋をする形で中性紙のバックボードを取りつけた。額は元のものを使用した。
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